2022年8月、私は英語がほとんど話せないまま、海外のメンバーと英語で仕事をする会社に入りました。その直前まで5年間ロシアにいて、毎日使っていたのはロシア語です。会議に出ても、一文のうち聞き取れるのは2〜3語だけ。もし当時ChatGPTの音声モードがあったら、毎晩それで練習していたと思います。
そして、たぶん1週間でやめていました。
ChatGPTで英会話の練習はできます。この記事では、そのまま使えるプロンプト付きで、具体的なやり方を紹介します。あわせて、ChatGPTやGeminiの音声会話で多くの学習者がつまずく理由と、どのくらいのレベルになれば使いこなせるのかも、正直にお話しします。AIを使った英会話練習の全体像は、AI英会話で話せるようになる方法にまとめています。
最初にお断りしておくと、私はAI英会話アプリ「Chamate」を作っている者です。ChatGPTの音声モードもGeminiも、自分の英語の練習に実際に使ってきました。ここに書くのは、その体験にもとづく話です。
ChatGPTで英会話の練習はできる?
できます。ただし、ネイティブの英語がほぼ聞き取れるようになってからの話です。ChatGPTやGeminiの音声会話はとても自然ですが、もともと英語を使いこなせる人に向けて作られています。話すのが速く、こちらが考えて黙った瞬間に返事をしてきて、間違いを直すための機能もありません。初級〜中級の人は、英語学習のために作られたAIから始めたほうが、ずっと効率よく上達できます。
話す練習で差が出るポイントを、表にまとめました。
| ChatGPT・Geminiの音声会話 | 学習用に作られたアプリ(例:Chamate) | |
|---|---|---|
| 話すスピード | ネイティブと同じ速さ。ゆっくり話してと頼むと、しばらくは遅くなる | AIの話す速さを設定でき、会話の最後まで変わらない |
| 言葉に詰まったとき | 沈黙を「話し終わった」と受け取り、すぐに返事をする | タップして話し始め、もう一度タップで送信。AIは最後まで待つ |
| 単語・文法の難しさ | プロンプト次第。会話が進むと元の難しさに戻りがち | A1〜C2からレベルを選ぶと、そのレベルに合った単語・時制・文の形で話し続ける |
| 文法の添削 | 頼んだときだけ。直したり直さなかったり | 話している最中に添削 |
| 聞き直し・シャドーイング | そのための作りになっていない | AIの発言も自分の声も、何度でも聞き直せる |
| 会話中の単語チェック | 会話を止めて質問する必要がある | その場で調べられて、単語帳に自動で保存 |
| 向いている人 | 英語に慣れていて、雑談や調べものをしたい人 | 初級〜中級の学習者 |
ChatGPTで英会話を練習する5つのステップ
まずはChatGPTで試してみたい、という方へ。試す価値はありますし、始めるだけなら無料版で十分です。私ならこう設定します。ステップごとに、ありがちな失敗も書いておきます。
ステップ1:スマホアプリの音声モードを使う
ChatGPTのアプリを入れてログインし、入力欄の横にある音声のアイコンをタップします。ブラウザ版よりアプリがおすすめです。通勤中や家事をしながらでも練習できるからです。
よくある失敗:周りの音を拾って聞き間違え、言ってもいないことに返事をされる。マイク付きのイヤホンを使えば、たいてい解決します。
ステップ2:最初のひとことで自分のレベルを伝える
いきなり話し始めるのではなく、最初に自分のレベルと、どう話してほしいかを伝えます。
「英語を勉強中で、レベルは英検準2級(CEFRのA2)くらいです。ゆっくり、短い文と簡単な単語で話してください。質問は一度にひとつだけにしてください。」
この文を設定の「カスタム指示」に入れておけば、毎回言い直す必要はありません。
よくある失敗:何往復かすると、スピードも難しさも少しずつ元に戻ります。ついていけなくなったら「Please slow down and use simpler words.」と言って引き戻しましょう。
ステップ3:場面をしぼる
「英語で話そう」だけだと、4文ほどで話題が尽きます。昨日やったこと、カフェでの注文、自分の仕事の説明など、場面が具体的なほうがずっと話しやすくなります。
ロールプレイなら、こう頼んでみてください。
「Let's role-play. You are a barista in a coffee shop in London. I'm a customer. Start the conversation.」
ステップ4:添削は全部ではなく、ひとつだけ頼む
間違いを全部直してと頼むと、ひとこと話すたびに文法の解説が始まり、会話はそこで止まってしまいます。私の場合、いちばん大きな間違いだけを直してもらうほうがうまくいきました。
「私が答えるたびに、いちばん大きな間違いだけを一文で短く直してから、会話を続けてください。」
よくある失敗:音声だと添削が一瞬で流れて、すぐに忘れてしまう。練習のあとでテキストの履歴を開き、何を直されたか読み返しましょう。
ステップ5:短く、毎日続ける
日曜日にまとめて2時間やるより、毎日15分のほうが身につきます。ChatGPTで練習する場合も同じです。
ChatGPTやGeminiの音声会話で、学習者がつまずく理由
公平のために言うと、ChatGPTやGeminiの音声会話が悪いわけではありません。悩みを話したり調べものをしたりするのに、毎日使っている人がいるほどよくできています。ただ、もともと英語を話せる人に向けて作られているので、上級者には便利な仕様が、学習者にはかえって邪魔になってしまうのです。
話すのが速く、頼んでもまた速くなる
標準のスピードは、ふだんの会話の速さです。15語ほどの文が、単語同士つながって一気に流れてきます。初心者に聞き取れるのは、そのうちの数語でしょう。私も「ゆっくり話して」と頼みました。数文はゆっくりになりますが、すぐ元の速さに戻ります。会話の途中で頼んだことは、設定のようにずっと残るわけではないからです。
あの会社に入ったばかりの頃、私は一文につき2〜3語しか聞き取れませんでした。そのレベルで速いAIと話しても、身につくのはわかったふりのうなずき方くらいです。そして、うなずいているだけでは英語は上達しません。
考えている途中で、返事をされてしまう
学習者の英語は、たいていこんな感じです。「Yesterday I… えーと… go… went to…」。この「えーと」の間に、頭の中では単語と時制を探しています。ところがChatGPTやGeminiの音声会話は、この沈黙を話し終わった合図と受け取って返事をしてきます。組み立てかけの文はそこで消え、次に話すときは少し口が重くなります。
英語に慣れた人にとっては、すぐ返事が来るのが自然です。5秒待ってから答える相手は、むしろ不自然に感じるでしょう。でも学習者に必要なのは、まさにその5秒です。
日本人の学習者には、文を頭の中で組み立ててから口に出す人が多いとよく言われます。間違えたくない気持ちが強いほど、考える時間は長くなります。その数秒を待ってくれない相手とは、いちばん相性が悪いのです。
会話の中に、学ぶための道具がない
練習していると、ちょっとした手助けが何度もほしくなります。今の文のどこが間違っていたのか知りたい。AIが言った文をもう一度聞いて、シャドーイングしたい。知らない単語を、会話を止めずに調べたい。その単語を、あとで見返せるように取っておきたい。ChatGPTやGeminiには、こうしたことをするための機能がありません。音声モードを抜けて文字で質問すればできますが、そのころには会話の流れが途切れています。
96%テスト:ChatGPTの音声会話が向いているのはどんな人?
研究データではなく、私自身の経験から出した目安です。ネイティブの英語が96%以上聞き取れて、毎日の会話にも困らないなら、ChatGPTやGeminiの音声会話は最高の話し相手になります。そのレベルなら、ナチュラルスピードこそ慣れておくべきものですし、文の途中で詰まることもほとんどないからです。
かんたんな確かめ方があります。英語のインタビューやポッドキャストを、字幕なしで5分聞いてみてください。一文ずつ追えている時間より、意味を推測している時間のほうが長いなら、まだその段階ではありません。それで大丈夫です。多くの学習者が、今まさにこの段階にいます。
私もそうでした。単語と文法は本で覚え、映画やYouTubeを見て、ひとりでシャドーイングもしました。語彙は増え、発音もはっきりしてきました。それでも同僚の前では、言葉が出てきません。覚えた知識がばらばらのまま、つながらなかったのです。
変わったきっかけは、実際の会話を何度も重ねたことです。社内で英語を話す友人たち、英語の先生をしている友人、週末の英会話クラブ。そうして2か月ほどたつと、自分でもわかるくらい反応が速くなっていました。
学習用に作られたAIは、どこが違うのか
Chamateを作り始めたときの問いは単純でした。英語が話せない人は、英語で話す相手をどこで見つければいいのか。マンツーマンのレッスンは高い。ネットで知らない人と話すには、予定を合わせる手間も気疲れもありますし、いつも安全とは限りません。オンライン英会話も人と話せる貴重な場ですが、予約が必要で、間違えるのが恥ずかしくて緊張するという人も少なくありません。AIなら、その多くを解決できます。ただし、学習のために作られたAIであれば、の話です。
一般的な音声アシスタントと比べて、Chamateには次のような違いがあります。
- タップして話し始め、もう一度タップで送信。考えるあいだ黙っていても、AIが割り込むことはありません。
- AIの話す速さを設定でき、会話の最後までその速さのままです。
- A1〜C2からレベルを選ぶと、AIは最初から最後まで、そのレベルに合った単語・時制・文の形で話します。
- 話している最中に、文法を添削します。
- AIの発言は何度でも聞き直してシャドーイングでき、自分の声も聞き返して比べられます。
- 単語が出てこなければ、日本語のまま言ってかまいません。Chamateが英語での言い方を示します。調べた単語は単語帳にたまり、ゲームで復習したり、ウィジェットでホーム画面やロック画面に表示したりできます。
- 練習モードは3つ。毎日のトピックを進める「ジャーニー」、何でも話せる「フリートーク」、実際の場面を自分で設定する「自分だけのシナリオ」です。求人票を貼り付けて、英語面接の練習をすることもできます。


Chamateについて詳しくは、Chamateのトップページをご覧ください。
おすすめの進め方
- ほとんど聞き取れず、よく詰まる段階:学習用のアプリで、スピードは遅め、レベルは低めにして、1日10〜15分。
- ふつうの会話についていける段階:スピードとレベルを上げ、ChatGPTやGeminiの音声会話も取り入れて、本来の速さに慣れる。
- 自信がついてきた段階:人と話す。オンライン英会話、英会話クラブ、職場の同僚、海外の友人。
個人的な感覚では、今のAIとの会話は、人と話すのに比べて9割くらいの自然さです。反応の速さと自信をつけるには十分です。ただ、AIはあくまで踏み台で、ゴールは人と話すことです。
正直なところ、自分がいつ英語を話せるようになったのか、はっきりとはわかりません。「話せない」から「話せる」へ一段上がった感覚はなく、毎日話しているあいだに、グラフの線がゆっくり上がり続けていた。そんな感覚に近いです。

